今年は10月1日~ 25日オンラインで、開催します。
一部アーカイブは2021年9月30日まで公開します。

山下公園前の海が生き物たちの棲みかに!
横浜の豊かな海づくりプロジェクト横浜市 環境科学研究所

横浜市環境科学研究所は、横浜市の地域に応じた生物多様性の保全、都市環境問題に対する調査や研究を行っています。多様な生き物が生息する横浜の海を取り戻すため、豊かな海づくり事業として、山下公園前の海域で実験・調査を行いました。生物が少なかった海域が人間の手を加えることでどう変化していくのか、実験結果に注目が集まっています。

目次

港町・横浜と海の深い関係

“横浜”と言えば港町というイメージをお持ちの方も多いでしょう。
横浜は海と関係の深い街。かつて横浜市の沿岸は漁業や海苔の養殖が盛んで、昭和の中頃までは海水浴場がたくさんあり、磯で遊んだり海水浴を楽しむ人が多かったといいます。横浜の海には生き物もたくさん生息し、人々の暮らしと海とは、密接な関係にありました。
しかし、高度成長期以降、人々の生活が便利に豊かになっていく半面、沿岸の埋立地が一大工業地帯へと発展し、工場から出る廃水、生活排水などによって水質が悪化。人々が海と親しめる環境は少なくなってしまいました。公共下水道の整備など環境改善事業を行い、水質は徐々に向上してきましたが、いまだに夏場は赤潮が発生するなど課題が残っています。
海とゆかりの深い横浜だからこそ、多様な生物が生息する海洋環境、誰もが親しめる魅力あふれる海を目指して、横浜市は豊かな海づくり事業に取り組んでいるのです。

山下公園前がスイム会場に! 豊かな海を取り戻すプロジェクト始動

横浜港の開港から150周年を迎えた2009年、「世界トライアスロンシリーズ横浜大会」の開催が決定しました。以来、10回大会を迎えた2019年まで、山下公園や赤レンガ倉庫、みなとみらい21地区などを舞台に毎年熱戦が繰り広げられており、スイム会場となっているのは山下公園前の海域です。
この海域は、護岸から少し離れると水深5mにまで急激に深くなり、海底にはヘドロが堆積しています。夏場は水深3mを超えると溶存酸素量が少なく、生き物たちにとって生息するのに厳しい環境となることが知られていて、実際に水深5m以上の場所で確認される生物はほんの1〜2種類でした。
そこで、世界中から集まったトライアスリートたちが競い合う海域の水質を少しでも改善しようと、海洋生物の水質浄化能力に期待して、生き物たちがたくさん集まる豊かな海へ再生させるプロジェクトが始動しました。2013年10月に始まった、横浜市とJFEスチール株式会社による共同研究は、山下公園テラス前の海底に鉄鋼スラグ製品の石やブロックを設置し、生物の種類が増えているかをモニタリング調査していくもので、2018年まで続けられました。

JFEスチール株式会社の記事はこちら
都会の海も豊かに蘇らせる鉄鋼スラグ製品で生き物が集う海へと再生(JFEスチール株式会社)

アマモもアイナメも! 様々な生き物たちの棲みかとなった海底

山下公園前海域での研究には、製鉄の際に発生する副産物である鉄鋼スラグを、岩石状やブロック状に加工した製品が使用されました。テラスのすぐ目の前の斜面には岩石状の鉄鋼スラグ製品を設置。少し離れた海底は岩石状の鉄鋼スラグで潜堤を設け自然砂を敷設、さらにその奥には鉄鋼スラグ製品のブロックや岩石、自然石を並べ、設置物の大きさや加工の違いによって生物の集まり方が異なるのか、などを比較しました。海底の質を改善するため、ベースとして砂利状の鉄鋼スラグ製品を敷き、深い部分でも水深4m程度まで底上げして造成しています。
特に水深の深かった区域では設置から1ヶ月ほどで付着生物の数が増え始め、メバルやウミタナゴ、ハゼなどの魚たちが集まっていることも確認。4ヶ月後には藻類なども増えていました。設置から1年ほどでアマモが生育し始めたことも分かり、様々な生き物たちが集まる豊かな環境へと変化しつつあることが確認できました。2018年冬にモニタリングした際には、アイナメの卵とそれを守る成魚も確認され、生き物たちが産卵し、生育する場所として機能していることが実証されたのです。

動画「遊んで学べる山下公園」

海の生き物たちの多様性を守るためにできること

ヘドロが堆積し、生き物がほとんどいない環境であった山下公園前の海域。同じ場所が、ほんの数年の実験によって生き物が集まり、産卵し、育つ環境へと変化したことは、私たち人間が海洋環境や生き物たちの多様性を守るためにできること、その可能性を示唆しています。2016年から2017年の調査では、実験海域で着生した貝類やホヤなどの海水をろ過する働きを持つ生物により、1日当たり25mプール17杯分もの海水がろ過されていることが分かっています。海底に生き物たちが増えることで、水質改善へとつながることが期待されているのです。
2019年の「世界トライアスロンシリーズ横浜大会」に合わせて開催されたイベント「グリーントライアスロン」の中で、山下公園前の海底からダイバーによる中継が行われ、活き活きと動くハゼなどの魚たち、ナマコ、ゆらゆら揺れるワカメなどが映し出されました。かつて人々が親しんだ、生き物たちの集まる豊かな横浜の海がそこにあります。

グリーントライアスロン2019水中実況中継

山下公園へお出かけの際には、目の前に広がる港の景色と楽しむと共に、すぐ下の海底に集まる生き物たちにも意識を向けてみましょう。今日も公園前の海では、たくさんの魚たちが泳ぎ回っているはずです。
横浜の海辺散策のお供に。海で見られる生き物も紹介しています。

横浜の海のいきものを題材にした4種類のコメントカード、5種類の塗り絵がダウンロードできます。

各種お問い合わせは

横浜市 環境科学研究所
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