今年は10月1日~ 25日オンラインで、開催します。
一部アーカイブは2021年9月30日まで公開します。

藻場や干潟が多様な価値を創生
人と地球を癒し育む海のチカラを感じよう
国土交通省 国土技術政策総合研究所 沿岸海洋・防災研究部 海洋環境研究室

地球温暖化の原因となる二酸化炭素を吸収し、地球環境を守る働きをしている沿岸域のブルーカーボン生態系。自然の力によって地球環境を保全するために、藻場や干潟を再生させる活動が日本各地で行われています。そこで、国土交通省 国土技術政策総合研究所 沿岸海洋・防災研究部 海洋環境研究室では、このような環境保全活動をサポートするための研究や技術支援を実施。最新の研究によって、藻場や干潟の造成が地球温暖化を緩和するだけでなく、高い経済効果を生み出すことも分かってきました。私たち人間が、海をもっと身近に感じて親しむことが、未来の地球環境を守ることへつながる、そんな新しい視点から環境問題について考えてみましょう。

目次

海の生物たちが地球の温暖化を食い止める! ブルーカーボンの重要性

近年、地球温暖化や気候変動が世界的に大きな環境問題となり、日本でも夏の猛暑や台風の大型化が顕著になってきました。気温の上昇だけでなく、海水温が上がることによって海中にも影響が及び、私たちの生活や自然界の動植物に大きな影響を及ぼしています。
この地球温暖化に対して、自然の力を使った緩和策があることをご存知ですか。
藻場、干潟、マングローブ林などの沿岸生態系は、大気から二酸化炭素を吸収し、植物の体内や土壌に炭素を蓄積します。このように、海域において植物が光合成などの作用で二酸化炭素を吸収し、体内や土壌に蓄積させた炭素のことを、ブルーカーボンと呼びます。自然の作用による二酸化炭素の吸収には森林が知られていますが、海中の植物にも同様の作用があり、地球温暖化を緩和する方法として、このような自然の力が改めて注目されているのです。

生き物が集まる藻場を再生させることで地球の環境を守る

沿岸の比較的水深が浅い海域では、アマモなどの海草類、コンブやアラメなどの海藻類が茂る藻場が形成されます。藻場はいわば海の中の森のような存在で、藻場による面積当たりの二酸化炭素の貯留速度は、陸上の熱帯林や温帯林と比較して、およそ25倍もあると言われています。しかし、地球上におけるその面積はおよそ100分の1に過ぎません。さらに、藻場は沿岸域の開発や水質悪化によって徐々に姿を消しており、1970年代には21万haあった国内の藻場と干潟の面積は、2010年代には13万haにまで減少してしまいました。多くの藻場が確認されている瀬戸内海においても、1960年から1980年の20年間で70%もの藻場が消えてしまったと言います。これは、沿岸域の開発だけでなく、ウニ・アイゴ等による食害や、地球温暖化に伴う異常な海水温上昇なども原因と考えられています。
ブルーカーボン生態系による二酸化炭素吸収量を増やしていくためには、失われた藻場を再生させることが重要です。そこで今、国内の多くの海域で、藻場の再生に向けた取り組みが活発に行われ、こうした活動を支援するために、藻場や干潟が生み出す経済的な価値を正確に評価して、その価値に見合うだけの寄付金や出資を募る仕組みの構築が検討されています。

藻場や干潟から生まれる効果、私たちの生活にもたらす恵み

沿岸の海域に広がる藻場は、二酸化炭素を吸収して地球の温暖化を抑制する役割だけでなく、多様な機能を持っています。まとめてみると、私たちは藻場や干潟からたくさんの恵みを受けていることが分かるでしょう。
〇藻場で産まれ育った魚が漁獲され私たちの食卓に並びます(食料供給)
〇小さな魚たちの隠れ場や産卵場となり命の育みを助けます(産卵場・育成場)
〇藻場に生息する底生生物や付着生物が有機物を分解し海水を浄化します(水質浄化)
〇海底付近の水の流れの力を弱め砂の浸食を抑制します(海岸保護)
〇多様な生物の住処となります(生物多様性)
〇釣りやシュノーケリングを楽しむ場所となります(観光・レクリエーション)
〇散策コースとして楽しむことができます(日々の憩いの場)
〇海の生物や自然を学ぶ場になります(環境学習)
東京湾に生活する住民に干潟の環境価値についてアンケート調査をしたところ、食料供給や水質浄化、温暖化抑制と同じように、生活を豊かにしてくれるレジャーや癒し、といった機能に、人々は高い価値を見出していることが分かりました。
食料を生産する機能のみで東京湾の4つの干潟の経済価値を算出すると、平均0.6億円/haにすぎませんが、観光やレジャーなど多様な機能の価値を統合すると平均で15.3億円/haに及び、限定された機能のみの価値より5倍程度も高い結果となります。レジャーや学習の場、憩いの場として人々が利用することによる経済価値が高く評価されており、水質浄化や種の保全の機能についても高い評価となりました。
詳しくは、『沿岸域における環境価値の定量化ハンドブック』(http://aquabiology.blog93.fc2.com/blog-entry-254.html)に紹介されています。

海に親しみながら生きることで未来の豊かな地球環境を創る

アンケートからも分かるように、沿岸に広がる藻場や干潟は、地球温暖化を抑制する機能だけが優れているわけではありません。
藻場や干潟は、海生生物を豊かに育み、海に親しんで生活する人々を笑顔にしてくれるでしょう。多くの人が海岸へ足を運び、美しい景色を眺めて生き物たちと触れ合いながら時間を過ごすことによって、藻場や干潟の価値はより一層高まります。価値の向上は、人々の藻場や干潟を大切にしようとする高い意識を生み、これらの場所を保全し再生するモチベーションとなっていきます。このことが、地球温暖化の抑制にも繋がるのです。
地球環境を守るためのアクションは、身近なところから始められます。藻場や干潟で生き物たちと楽しく遊びながら、この豊かな環境を育んでいきましょう。

各種お問い合わせは

国土交通省国土技術政策総合研究所
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