2022年10月1日~2023年9月30日まで公開します。

水中ドローンや無人運航船も実験成功!
東京湾のSDGsに貢献する”横須賀発”の新技術
横須賀市

東京湾と相模湾に面し、海とともに発展を遂げてきた横須賀市。ここには、漁業や観光などの海洋関連産業が直面している課題に、先進のテクノロジーで挑む企業、研究機関、教育機関が数多く集まっています。水中ドローンや無人運航船など、彼らが手掛けている画期的な技術は、未来の東京湾の環境を守り、私たちの社会が発展を続けていくための重要なカギとなるに違いありません。
未来を担う学生たちも参加し、東京湾のSDGs推進へ貢献することが期待される横須賀発の新技術。先端技術をいかにして活用していくのか、そのプロジェクトにご注目ください。

目次

食害モニタリング(株式会社マリン・ワーク・ジャパン)

水中用タイムラプスカメラで撮影された食害の様子

沿岸各地でワカメやノリなどの養殖が盛んに行われていますが、せっかく植え付けた幼葉を食べられてしまう、食害の問題も多数発生しています。そこで、横須賀市に本社を置く株式会社マリン・ワーク・ジャパンが、食害の犯人究明に乗り出しました。マリン・ワーク・ジャパンは、海象・環境モニタリングや底質調査、水産資源の調査など海と地球に関する幅広い調査・分析を行う企業です。
さっそく、水中用タイムラプスカメラ「MW-UWC-01」を養殖施設に設置して、水中の様子を撮影。このカメラは、電池とメモリー内蔵で水中に単独で設置でき、1分間隔の撮影で約1カ月、10分間隔なら約1年間の撮影が可能となっています。水中の変化を長期間撮影し続けられますから、養殖施設の観察にはもってこいのカメラです。
調査の結果、横須賀市の長井町漁業協同組合のワカメ養殖施設ではアイゴ、横須賀東部漁業協同組合走水大津支所のノリ養殖施設では、クロダイとボラの姿がとらえられました。こうして食害対象魚の出現条件、体長などを観察することで、効果的な食害対策を検討することができます。この結果を活かし、今後はカキ養殖施設の食害、カジメ移植後の経過観察、アオリイカ産卵床のモニタリングなどを予定。磯焼けのモニタリングにも活用できると考えています。

産学官連携による水産業へ水中ドローンの活用
(慶應義塾大学SFC研究所・神奈川県立海洋科学高等学校・長井町漁業協同組合・横須賀市)

近年、目覚ましい発展・普及を遂げているドローン技術は、その活用の場を空中のみならず水中にも広げ始めています。
現在、慶應義塾大学SFC研究所と、神奈川県立海洋科学高校、長井町漁業協同組合、横須賀市が連携し、水産業へドローンを活用するための人材育成や、ドローンを使った海域調査を実施する、中長期的な活動に取り組んでいます。
慶應義塾大学SFC研究所の技術指導を受け、海洋科学高校の生徒たちがドローンの操作習熟を図りながら、フィールド実習として磯焼けが進んでいる漁場の海中環境を調査します。加えて、長井町漁業協同組合の協力のもと、磯焼けの原因のひとつとされているムラサキウニなどの食害生物の生息状況の調査なども行っています。
この活動を通して、ドローンの幅広い活用を検討していくことで、漁業を取り巻く海洋環境の改善、新たな水産資源の活用、次世代の漁業を担う人材の育成などを進め、サステイナブルな社会の実現に貢献することを目指します。

無人運航船@横須賀市猿島プロジェクト
(丸紅株式会社・株式会社トライアングル・三井E&S造船株式会社・横須賀市)

ICTやAI、画像解析技術など最新技術を集結し自動化へとシフトしていく試みは、あらゆる分野で進められています。海上を航行する船舶の分野においても、船員の不足やヒューマンエラーによる事故など、様々な課題をクリアする解決策として無人航行に向けた技術開発が進んでいます。
丸紅株式会社、株式会社トライアングル、三井E&S造船株式会社、横須賀市が共同で取り組んできた、無人運航船のプロジェクトが実を結び、2022年1月に世界初となる小型観光船の無人運航実証実験を成功させました。
舞台となったのは、横須賀市の沖に浮かぶ猿島への観光航路。新三笠桟橋から猿島まで約1.7キロの距離を、小型観光船が離着桟を含めすべて無人で航行する実験に成功したのです。この船は、搭載した3台のカメラ、GNSS、AISなど様々なセンサーからの情報を障害物検知システムが自立操船システムへ送り、自動でほかの船を避けながら航行します。離桟や着桟時も、自立操船システムが自動でスロットルを動かし、無人操船を実現しました。
「MEGURI 2040」と題した無人運航船プロジェクトは、この猿島プロジェクトをはじめ、5つの無人化実証実験に取り組んでおり、2025年の実用化および2040年に国内を航行する船の50%を無人運航船とすることを目指して進められています。無人運航船プロジェクトによって、海事産業の活性化や、国際競争力の強化につながることが期待できるほか、将来を担う子どもたちに大海原を航行する船舶へのあこがれや夢をつないでいく、という意味でも大きな一歩となることでしょう。

港湾におけるDX
(東京九州フェリー株式会社・株式会社システム・ケイ)

フェリーを活用した貨物輸送は、トラックによる長距離の陸路輸送に比べ、環境負荷やドライバーの負担を低減できるとして拡大が期待されています。しかし、フェリーに大型トレーラーなどを積み下ろしする作業は、船内スペースや出入り口などの制約条件を満たしながら、限られた時間や人員で行う複雑な業務となります。これまでは、紙ベースの指示によって実施されてきましたが、このほど横須賀港と新門司港を結ぶ東京九州フェリーへ、AIを利用した新システムが導入され、作業の効率化や人員の削減に成功しました。
東京九州フェリーに導入されたのは、株式会社システム・ケイが開発した「SNF Cargo Tablet App」。AIの映像解析技術によって、車両ナンバーを読み取って、現場作業員のタブレットで共有できるというシステムです。
通常、大型トレーラーは積み降ろしを行う港で別々のトラクターヘッド(牽引部)が移動を担うため、牽引部と貨物部とで別のナンバープレートが付いているのですが、これまでのシステムでは後部のナンバーを認識することができませんでした。新たに導入した「SNF Cargo Tablet App」では、高度な映像解析技術で後部のナンバープレートも認識可能となり、現場作業員はタブレットで正確に貨物の状況を把握しながら積み付けの情報を入力するだけで、作業進捗を本部とリアルタイムで共有できる、というわけです。実際に新システムを導入した東京九州フェリーでは、車両誘導員を4人から2人まで削減。作業報告ミスもなくなったといいます。
新システムの運用を続けることで、積み付け作業のさらなる効率化、本船の運航効率の向上にもつながることが期待できます。DXという新たな視点からフェリー輸送の効率化を支えSDGsへ大きく貢献できる、画期的なシステムが動き始めています。

各種お問い合わせは

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