エム・エム ブリッジ株式会社は、橋梁事業をはじめとした鋼構造製品を手がける総合エンジニアリング企業です。起源は1868年、日本初の鉄橋である長崎市の「くろがね橋」建設にまで遡り、レインボーブリッジ、横浜ベイブリッジを代表とする国内外の多くの橋梁建設に携わりながら、高度な技術と豊富な実績で良質な社会インフラ整備に貢献してきました。
近年では、培った沿岸構造物の技術を利用して環境負荷の少ない製品開発、海洋環境の保全活動などにも積極的に取り組んでいます。
今回は、環境に関する活動の中から、サンゴの再生研究を行っている石垣島や長崎でのプロジェクト、環境負荷の少ない浮消波提の技術をご紹介しましょう。
サンゴを通じて人のココロを豊かに
エム・エム ブリッジは、多くの橋梁建設を手がけるとともに、防波堤や海中トンネル、フェリー乗り場など沿岸構造物の建設にも携わってきました。海にまつわる技術や製品の開発を続けてきたからこその視点を、安心安全な構造物の建設だけではなく、海洋環境の改善や保全にも活かしています。
例えば、竹富島に建設した浮桟橋の側面にサンゴが生育していることを発見したことから、サンゴ礁の再生へ向けた技術開発が始まりました。多くの生き物を育むサンゴの海を取り戻すため、私たちが手がける鋼構造物の防食技術がサンゴ礁の再生技術として活用出来るよう日々研究を続けております。

浮桟橋がきっかけで始まったサンゴ再生技術の開発 ~石垣プロジェクト~
地球温暖化に伴う海水温の上昇は、沖縄のサンゴ礁に壊滅的なダメージを与えています。2007年、2016年には、記録的な海水温の上昇により石垣島と西表島の間に広がる国内最大のサンゴ礁「石西礁湖」で多くのサンゴが死滅したと言われ、サンゴ礁再生のための取り組みは重要視されています。
そんな中、2007年から始まったのがエム・エム ブリッジのサンゴ再生プロジェクト。実は、電気防食技術を使った浮桟橋の建設がきっかけとなりました。
常に海水中にある鉄製の浮桟橋のサビを防止するために、「電気防食」という技術を採用していますが、この金属の性質によって微弱な電流を流す防食技術が、サンゴの成長に役立つことを発見したのです。
私たちはこの技術を「GMC(Galvanic Method for Corals)」と名付けました。大学や関連企業とともに10年以上にわたり石垣島にて地元の方々の力を借りながら、環境問題に少しでも貢献できるように研究を進めています。
石垣島におけるGMC技術による研究では、異なる電流密度(以下、電流)が発生する生育棚を製作し、サンゴの生育状況を確認しました。その結果、防食電流程度の微弱な電流が流れる生育棚が最も盛んにサンゴの生育が見られることが分かりました。

エコツーリズムにサンゴ生育棚を活用 ~長崎プロジェクト~
実証実験によってサンゴの成長促進が確認された生育棚の技術を、沖縄以外の海にも広げる活動を開始しました。
ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング(株)のCSR活動に参画し、長崎県高島のエコツーリズムにサンゴ生育棚を活用しています。
地域おこし団体「やったろうde高島」とGMCメンバーが共同で高島海水浴場にサンゴの生育棚を設置しました。高島海水浴場は、岸に近い場所で多くのサンゴが見られる貴重なエリアです。「やったろう de 高島」が展開しているシュノーケリング体験事業の参加者に、設置した生育棚のサンゴの様子を公開しています。


海の環境に優しい構造物の開発 ~浮消波提~
エム・エム ブリッジでは、環境負荷が少ない沿岸構造物の開発も進めています。
浮消波提は、海面付近の波のエネルギーを反射、攪乱、吸収する機能を持つ浮体をチェーンとアンカーなどで係留する構造物で、設置する海域の波の周期に合わせて3種類の形式を開発しています。
移動や撤去が容易であることから、様々な海域への設置が可能ですし、海水の交流を妨げず、浮魚礁として海洋生物の生育環境の保全にも効果を発揮します。浮消波提は、漁場や港湾内の安全と豊かな海洋環境を守る構造物として、さらなる活用が期待できる沿岸技術です。




エム・エム ブリッジが取り組むサスティナビリティ
島と島、地域と地域をつなぐ橋は、交通のネットワークを形成するだけではなく、人と人の暮らしや心をつなぐという重要な役割を担っています。
浮桟橋の技術が基となったサンゴの再生活動も、サンゴ礁が広がる豊かな海を未来へとつなぎ、自然から得られる恵みや癒しを人々の心へ届けられるよう、さらなる発展を目指して研究を進めています。